円山なのめさん『雨が刺さりそうだ』(揺籃社)

http://nanomenome.com/?search=%BB%ED%B2%CE%B6%E7%BD%B8+%B1%AB%A4%AC%BB%C9%A4%B5%A4%EA%A4%BD%A4%A6%A4%C0 【暑中お見舞い申し上げます】より

暑中お見舞い申し上げます。毎朝夕、庭の草木とガマちゃんに水をかけるのが日課となりました。前回、黄色い変形菌がいた場所です。約2週間後にまた見る機会がありました。

前回変形菌がいた場所は、白く変色していますこれは子実体でしょうか

うーん。カビかキノコかもしれないし…別の場所にいた変形菌。ススホコリ?

植物学者・牧野富太郎をモデルにした朝の連続ドラマ『らんまん』をちょいちょい観るのですが、変形菌に魅せられている学生さんが出ています。

いま受講中の変形菌の講座でも、先生が話題にされていました^^

あの学生さんのモデルは、変形菌の鞭毛や形態変化について発表した田中延次郎さんのようです。

主人公が、お世話になった教授の名前を論文に入れずに雑誌を刷ってしまったことで、いろいろ暗転して…ドラマはなかなかしんどく展開中ですね。

どのようなジャンル、どのようなレベルであっても本を出そうと思うとき、いちどは謝辞について頭を悩ませるのではないでしょうか。

私が詩歌句集を自費出版したとき、かなり考えたことを思いだしました。

謝辞を断られる方もいらっしゃり、いろいろ考えた結果、謝辞の文章そのものを入れなかったのですが今思えば個人個人の名前に触れなくても、お世話になった方々へ謝意をあらわす表現を入れることはできたかもしれません。

作者がどれだけ考えた時間を取ろうと、心に恩を感じていようと、印刷に残るのは文字だけで、そこから印象が決まることもあります。

刊行物については、自分の推敲だけでなく、詳しい人の意見とチェックが大事だなあと思いました。もうすぐ姉の七回忌です。

詩歌句集『雨が刺さりそうだ』は、姉が「自分のためになることに使ってね」と遺してくれたお金で、がむしゃらにつくったものでした。

わたしに足りないものを気づかせてくれる本ともなったのですが、今でもときどき感想を寄せてくださる方がいらっしゃいます。本当にありがたいことと感じています。

得体のしれない暑さの極み。どうぞ皆さま、お体にお気をつけてお過ごしください。


詩句歌集 雨が刺さりそうだ  円山なのめ

円山なのめ円山なのめ

恋人の牙抜く夜のバナナかな

Oh a banana in the night When I defang my lover

太陽は熱すぎ月は冷たすぎ地球さみしすぎエイリアン死す

Too hot sun Too cool moon Too lonesome earth The alien has died

~収録作品より~

俳句・短歌を一行詩としてとらえ、現代詩と共に所収した詩歌句集。日英両文併記。

夢枕に茸が立つ/あなたのわたしの枕元に今夜

The fungus will come out/In your dream and mine tonight

~詩「夢枕に茸が」より~

商品の説明

出版社からのコメント

俳句と短歌と詩で構成されたユニークな佳品。

センシティヴながらも芯の強さを感じる作品に、ゾワゾワしたり、モゾモゾしたり、トクトクしたり。心に言葉が刺さりそうだ!

著者について

東京都出身。早稲田大学卒業。西沢雅野の名で小説『イボ記』(小学館、2001年。現在、電子書籍版のみ)刊行。

Maruyama Nanome is born in Tokyo, Japan. She graduated from Waseda University. Her work as "Nishizawa Masano" is a nobel "Iboki" (Published by Shogakukan in 2001. As of now, Japanese E-book version only).


http://nanomenome.com/?eid=212 【『BOX ~箱の中に何かいる~ 』3巻あらすじ&読後感想】より

諸星大二郎『BOX ~箱の中に何かいる~』3巻を読みました。今回で完結!

・・・あらすじ・・・

上がっているかと思うと下がっている「エッシャーの階段」と、遠近感を狂わせるトリックに満ちた「錯視の塔」が次のステージ。

モンスター化した甲田に追われながらも興子はパズルをクリア。

ナビゲーターの魔少女を罠に嵌めてプレイヤーに仕立て、自分たちと一蓮托生の運命にひきずりこむ。塔の下から現れた最終ステージは巨大な「箱」そのもの。

魔少女はメンバーの誰かにみなを裏切らせてゲームを不成立にさせようともくろむが、興子によって自滅に追い込まれる。

残る興子と光二、惠、神宮の結束は固く、そろって「箱」に要求されたものを与える決断をした。無事、外に出ることができた4人。

「箱」の中にいるものに自分の一部を与えたことにより、世界は以前と変わっている。

だが戻ってきた4人は、世界の何がどう変わったのかさえわからない。

ただ、それぞれに確かな喪失感と違和感を抱えながら、普通の暮らしに戻っていくのだった。

甲田と山内は「行方不明」。谷夫婦は最初から「存在しなかった」。「すべて世はこともなし」↓ここから読後感想(ネタバレ)↓

最終ステージに立ったメンバーに箱が要求したものは、各自が「これさえなければ」という願望を抱いていた対象でした。

光二にとっては死別した兄の存在。惠にとっては男性性。神宮にとっては霊感。興子さんについては(喪失願望があったかどうかわかりませんが)度を越した好奇心。

それらは神宮が「ここに集まった人たちってみんな訳ありですよね」と言った「訳」の部分であり、業と呼んでもいいものでした。

作品として見るなら、それぞれのキャラを立たせていた要素です。

なんにでも興味津々の興子さんは、ギリシャ神話で好奇心に駆られ禁断の箱を開けたパンドラを、徹底したトリックスターに変換したキャラ。

そんな興子さんに導かれて開いた「箱」はいうなれば日本版パンドラの箱。

とすると、最後に出て来た「物凄いもの」は「希望」とも読めます。

「希望」が人を誘い込み、惑わして、各人が背に負い、その重さをかこってはいても、その人をその人たらしめていた荷物を搾取する。

「希望」に利用されたあとの人間には喪失感と、平穏だが見るべきところもない人生が待っている・・・

各人が願望をかなえられてよかったじゃん、と単純には思えない灰色エンドでした。

世界というひとつのパズルは完成しているのだけど、個々のピースの形が知らないうちに変えられてしまった。それが結局は「こともなし」になってしまう、ということへの無常感。

最近できた政党の名前を思うと、物語の時事性にもびっくり。

すぐれた作品は作者の意図するしないに関わらず、時代と共鳴するものですね。

諸星作品は漫画で読めればそれで大満足なのですが、この作品に関しては質のいい3Dアニメで観てみたいな。錯視が現実化するところとか。

3巻でわたしのお気に入りは次のみっつのシーン。

・いちずな山内

・けなげな神宮

・おちつけ光二

そうそう、自称ナビゲーターの少女の正体は、箱の内部に寄生して、人間が裏切り合ったり愚行に走るさまを見て楽しむ「通り悪魔」でした。

イソウロウグモみたいな悪魔ですね~

魔少女VS興子さんの最終局面は、囚人ゲーム理論も入っていておもしろかったです。

瓜子姫の夜・シンデレラの朝 (朝日コミック文庫)

瓜子姫の夜・シンデレラの朝 (朝日コミック文庫)

余談ですが諸星作品の短編『悪魔の煤けた相棒』(『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』所収)に出てくる悪魔のほうは、出番がちょっぴりだけなのが惜しい、いい感じのキャラ。

主人公は悪魔の「煤けた相棒」である男ですが、この男、7年のあいだ髪をくしけずらず体を洗わず・・・

『ロードオブザリング』のアラゴルン、『アナと雪の女王』のクリストフと並んで、わたしの中の三大「臭うイケメン」。

みんな、やることがサラッとかっこいいし、映像やアニメや漫画ではにおいがわからんので気にならないですが、じっさい側にいたら、そりゃもう、くさいんだろうなあ^

0コメント

  • 1000 / 1000